【完】ヒミツの恋を君と。
晴が祐樹先輩に殴られたのは初めてじゃない。

あたしが気付かなかっただけで、きっと何度も殴られてた。




「あの祐樹先輩って……晴にこんなことするなんて、許せないよ…」




悔しくて、悔しくて、零れ出るあたしの涙を、晴は親指でそっと拭った。





「この間から嫌な思いばっかりさせてるな」


「嫌な思いをしてるのは晴でしょ?」





あたしの言葉に、晴はふっと頬を緩めた。





「さっきのは兄弟喧嘩みたいなものだから、心配すんな」


「兄弟喧嘩って…?」


「あいつは血は繋がってないけど、戸籍上は兄弟なんだ」


「え?」





だから、“河野”同じ苗字。

偶然じゃなかったんだ。




でも、血が繋がらないってどういう?

あたしの疑問を読み取った様に晴が口を開いた。





「俺の姉と祐樹の父親が結婚したんだ」


「えっ…でも、それだと晴と祐樹先輩は兄弟じゃないよね?」


「いろいろ複雑なんだ。俺の本当の親はろくでもない人間で、俺は親はいないも同然なんだ。姉さんとも血は繋がってない。でも、俺を育ててくれたのは姉で、祐樹の父親と結婚する時、姉も祐樹の父親も俺のことを心配して養子縁組を組んでくれたんだ」


「……」


「…祐樹は俺のことよく思ってねぇんだよ」


「……っ…なんで…」





それ以上、何にも言葉が出てこなかった。


晴の家庭環境は複雑で、この説明を聞くだけでも分かるのは、晴の近くに晴と血が繋がってる人はひとりもいないってこと。



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