【完】ヒミツの恋を君と。
俺が祐樹と出会う前の話───…
俺の父親はどうしようもない奴だった。
俺の実の母親は、俺が小学校に入ったばかりの頃、働かずにふらふらしてる父親に愛想をつかして、俺も捨てて出て行った。
それからは父親と2人で暮らしてたけど、小学校3年の時、父親はある人と再婚する。
「晴くん、よろしくね。この子は私の娘。だから今日から晴くんのお姉ちゃんだから」
あのどうしようもない父と結婚してくれたのは、意外にも優しい人で、その日からその人が俺の母親になって、その娘の樹里(じゅり)が姉になった。
その日からは、穏やかな生活だった。
初めて出来た姉は、俺より10上の19歳、大学生。
姉さんも兄弟はいなかったから、俺のことを本当の弟の様に可愛がってくれた。
姉さんは普段、働く母さんの変わりにご飯を作ってくれたり、勉強を見てくれてたりして、歳が離れてるのもあって、姉というより、母親みたいな存在だった。
母さんも仕事が休みの時にはいろんな所へ、俺と姉さんを連れて出てくれて。
俺は血の繋がらないこの2人を慕ってた。
自分の両親よりも、“家族”っていうものを俺に教えてくれた。
生まれて初めて知った、穏やかな時間、家族の温もり、これが一生続くんだって、幼い俺は思ってた。
でも、それは簡単に壊される。
俺が小学6年に上がる前、この穏やかな時間を俺から奪ったのは、また父親だった。