【完】ヒミツの恋を君と。
再婚してから3年弱、父親は少しはまともになっていると信じてたのに。


あいつは、ギャンブルで多額の借金を作った挙句、女をつくって失踪した。





今度こそ許せなかった。



あいつは母さんと姉さんに恩を感じるどころか、借金と俺を残して逃げたんだ。


姿をくらました父親の変わりに、借金の催促は母さんに来る様になって……。





俺と借金なんて投げ出して姉さんと逃げればいいのに、母さんはそうはしなかった。


姉さんは大学を辞めて働き始め、母さんも昼夜なく働いた。




まだまだ子どもで、2人の力になれない自分を責めてた俺に聞こえてきたのは、周りの身近な大人達の声。



『あの男せいで、私達まで借金取りに取り立てられていい迷惑』


『それにしてもあの子のあの顔、父親そっくりね。親子揃って顔は整ってるんだけどねー』


『あの子も同じ遺伝子を持ってるんだもの!きっとろくでもない子になるわよ!』





俺はその頃から自分の顔が嫌いでたまらなくなった。

大人になればなるほど、あいつに、父親にそっくりになってきたから。





父親のこと知ってる大人は、俺の顔を見るなり嫌悪に満ちた顔をする。



俺はあいつじゃない!



どんなに心の中でさけんでみても、結局この顔のせいで、冷ややかな目を向けられる。




その内、心の中ですら反論する力もなくなって、もしかしたら、俺もあいつみたいにろくでもない人間になるんじゃないかっていう恐怖感に取り憑かれるようになった。


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