【完】ヒミツの恋を君と。
母さんの車がガードレールにぶつかっての事故だった。


警察は詳しい原因は不明としながら、ブレーキ痕がないことから、『居眠り』が原因じゃないかと言った。




昼夜なく働いて、父親の借金を返して、俺を育ててくれてた母さん。



原因は不明なんかじゃない。

原因は俺の父…そして、すべて母さんに頼ることしか出来なかった子どもの俺。




車を運転中に居眠りしてしまうほど、働かなきゃいけない状況を作ったのは俺達親子だ。


俺達親子が母さんを殺したも同然だった。



この時、いつも明るい姉さんの涙を初めて見た。





でも、姉さんは俺を責めることなんてしなかった。

それどころか、俺を抱きしめて『大丈夫だからね』って何度も呟いてた。



張り裂けそうなほどの胸が痛くて…。





姉さんに『ごめん』って謝りたかったのに、言葉にならなかった。



ただ、子どもの俺に出来ることと言えば、心の中で祈ることだけ。





この世に神様がいるなら、俺はどうなってもいいから、姉さんだけは目一杯、幸せにしてやって下さい──

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