【完】ヒミツの恋を君と。
「怖くなんかないよ」


「……」


「だから、一緒に暮らそう」






晴が優しく微笑んでから、頷いた。


その目はもう、揺れたりしていない。

真っ直ぐあたしを見つめてた。







ふと、聞いてみたくなる。




“さっきのキスの意味は何?”

“晴はあたしをどう思ってる?”




自分にとって都合のいい言葉が欲しくなる。





あたしはキスに深い意味を求めてしまう。

でも、晴が同じ様に深い意味を持ってたかどうかは分からない。





あたしは、この家を晴の逃げ場所にすることに決めた。





だから、聞かない。

あたしの気持ちも、隠してく。





あたしの気持ちを知ったら、晴はここにいられなくなるから。




晴は来年東京の大学に行く。

それまでは、出来るだけ、晴を祐樹先輩から離していたい。






晴を守りたい。





子どもの頃から、何にも出来ない弱虫だったくせに…。


でも、あたしは今、本気でそう思ってた。



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