【完】ヒミツの恋を君と。
キス──



あたし、晴とまたキスしてるんだ。

ギューって収縮するような甘い痛みが胸元を襲う。



晴が体を起こす様に反転して、それと同時にあたしの体も反転する。



晴とあたしの位置が入れ替わった。

あたしを組み敷く体勢にした晴。




仰向けになったあたしの左手を、晴の手が握る。


上から覆いかぶさる様にキスされて、頭の芯が朦朧(もうろう)となった。



やっぱり、晴のキスはあたしの不安を溶かしていく。





耳に聞こえる音は、窓の外の雨音と、晴とあたしの唇が重なる音だけ。

感じるのは、晴の体温と、息使いだけ。





真っ暗な中、ここにいるのは晴とあたしだけで……。




このまま、ずっと、晴とあたしの時間が終わらなければいい。




晴にあたし以外を見せたくない。

あたしだけの傍にいて。



それは怖いくらいの独占欲。

自分の中にそんな感情が存在してるなんて生まれて初めて知った。



誰にも晴を渡したくない。





そう感じた瞬間、美月先輩の顔が思い浮かんでしまった。





お願い。

今は出てこないで、あたしの頭の中にも…。

晴の頭の中にも。




焦げる様な嫉妬心。

そして、それを感じてる自分への嫌悪感で、壊れそうなほど頭が痛くなる。





「…晴……」


「桃佳…」





その痛みを消したくて、キスとキスとの間にその名前を呼べば、晴もあたしの名前を呼んでくれる。


顔が見えないこの状態でも、ちゃんとあたしを感じてくれている。



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