【完】ヒミツの恋を君と。
普段なら照れるお客さんの冷やかしも、あの日から辛く感じてる。





「なに難しい顔してんだよ?」





晴が俯いてたあたしの顎に手を掛けて、クイッと上を向かせた。


店内に沸き上がる歓声。


晴があたしの顔を覗き込む様に近付けてくる。



これはいつものパフォーマンス。

トウヤさんやリツキさんがあたしに絡みつくのと一緒。



そう自分に言い聞かせるのに…。





「反抗期なの?真っ赤な顔してどうしたんだよ?」





晴がお客さんを喜ばせるような言葉を言ってるんだってのは分かってる。


でも、自分の顔が赤くなってる事実を指摘されて、少し悔しかった。



芝居だって分かってても、こんなことされたら、あたしはどうしようもなくドキドキしてしまう。


それなのに晴は、普通…





「分かったから、ちゃんと働くから離してよ!」





晴に対して、ちょっときつくなった口調に、お客さん達がどよめいた。


しまった。


モカの普段の反応なら“ご、ご、ごめんなさい!”って感じなのに。



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