【完】ヒミツの恋を君と。
「ごめんね、驚かせちゃった?早かったねー桃佳ちゃん!」





振り向くと、笑顔を貼り付けた祐樹先輩が立っている。





「なんで?…そんなに早いんですか?」





あたしより、早くここに来てた様な雰囲気。

祐樹先輩の家、学校からタクシーで来たとしてもこんなに早く着けるはずは無いのに。





「きっと呼び出されると思ったから、スタンバイしてたんだ」





あたしの行動なんてお見通しってこと?

王子様スマイルを作って見せた祐樹先輩を本気で怖いと思った。





「桃佳ちゃんこっちでゆっくり話そうか?」


「え…?」





祐樹先輩が指差すのは、港の一角にある大きな古びた工場のような倉庫のような建物。



今はもう使われてる様子はなくて。


古びた大きなシャッターの下の部分だけが空いている。



祐樹先輩は、あたしに手招きをしてそのシャッターの下から倉庫の中に入っていった。



怖い…この中に入ってしまったら、完全に人目にはつかなくなる。


そう思うと、足が固まって動かない。




でも、こんな時でも、思い浮かぶのは晴の笑顔で。

その笑顔を思い出すと、晴を守りたいと思う自分の感情が、どうしようもなく溢れ出てくる。



今度こそは、祐樹先輩から晴を守りたい。



それに、美月先輩は今、きっと晴に会いに行っている。


美月先輩が晴を笑顔にしてくれるなら、祐樹先輩にそれを邪魔させるわけにはいかない。


あたしがここで引き止めないと…。



深呼吸して、覚悟を決めたあたしは、シャッターの下をくぐって倉庫の中に入っていった。






倉庫の中はホコリ臭くて、だだっ広い空間。

天井は学校の体育館くらい高くて天窓があるから中は意外にも明るかった。


よかった…。

きっと中は真っ暗なんだと思ってたから安心した。


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