【完】ヒミツの恋を君と。
祐樹先輩は険しい表情のまま、あたしが距離を開けるとその分だけあたしに近付いてくる。

あたしも足を引きずりながら、距離を保つように後退し続けた。



あたしは今、祐樹先輩の地雷を踏んでしまったみたいで。

その恐怖に体がまた、震え始める。



晴…晴……

心の中でその名前を何度もつぶやいた。





「なら、なんであいつは家を出て行こうとするんだよ!」


「え…」


「養子縁組を組んで間もない頃、晴が親父に『高校卒業したら養子縁組を解消して欲しい』って話してるのを俺は聞いたんだよ」





晴は家を出るだけじゃなくて、そんなことまで考えてたんだ?





「晴は俺のこと友達だなんて思ってねぇよ!友達になった頃は俺のことだけ頼ってたのに、俺以外にあいつは心を開いてなかったのに」





苦しそうに吐き出される言葉に、祐樹先輩の本音はつまってた。





「家族になってから、あいつは俺からどんどん離れていった。いつの間にか親父にも心を開いて、美月のことだってそうだ!最初は美月とあんまり話さなかったのに、いつの間にか美月にまで心を開いてた!」


「違う!離れていったんじゃない。晴は祐樹先輩やお姉さんの幸せを思って、慣れない環境で、一生懸命努力してたんだと思う。祐樹先輩の不安がそう思わせただけじゃないですか?」


「うるさい!」





嫉妬…


祐樹先輩は、晴をお父さんや美月先輩に取られると思い込んだ。


そして逆に、晴に、お父さんや美月先輩を取られるって思い込んで、孤独を抱え込んでしまったんだ。



その不安や苛立ちが、一番自分に近いと思ってた晴に向いた。



祐樹先輩の言動がめちゃくちゃな理由が分かった気がした。
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