【完】ヒミツの恋を君と。
店長が晴の耳元でそう囁けば、晴は店長を睨んでから、その後諦めた様に溜息を吐いた。


からかわれて不機嫌そうな顔をする晴と、そんな晴を見て心底楽しそうに笑う店長。



店長と晴は随分仲がいい……よね。


さっき店長が言ってた言葉が脳裏に蘇(よみがえ)る。




『晴、この程度、桃佳ちゃんに触ったくらいでカリカリすんなよ。眉間にシワ寄ってんぞ、嫉妬かよお前』




晴が嫉妬……?

そんな晴を店長はかわいいと言ってた。





えぇっ!?





店長は晴の肩に腕を置いたまま会話を続けてるけど、妄想スイッチの入ったあたしの耳にはもう入ってこない。


気になるのは見つめ合う2人の距離がやたらと近いこと。



嫉妬って……店長があたしにちょっかいかけたから!?

晴はあたしに嫉妬の炎を燃やしてるって事!?





あたしの脳裏には、あの日見たBL漫画が浮かぶ。





うわぁぁぁぁ──っ!は、晴ってばやっぱりリアルBLなの!?

あ、あ、あ、相手は店長!?!?





そ、そう言えば、ここのカフェの名前「Precious(プレシャス)」は海賊漫画の海賊団の名前で…。


漫画の中では、船長とその一味のひとりがBL設定だった!?


なんかもう全部のツジツマが合う気がする!





「……は、晴と店長が…プレシャスでBLで…だから晴はBL漫画を……持ってた……?えぇぇっ!やだぁぁぁ──」


「…ちょっと待て……お前…今なんて言った?」


「へぇっ!?」





心の中で言ったつもりが、どうやら口に出してたみたいで、振り向いていた晴に目一杯怪訝な顔で見下ろされた。



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