【完】ヒミツの恋を君と。
『吉丘さんって松井春華の引き立て役になってるの分かってるのかな?』




そんな風にヒソヒソ笑われてるのを知ってたけど気にもならなかった。


そんなのどうでもよく感じるくらい、あたしにとって2人の春と共に過ごす時間が幸せだった。





『“桃”の木は、“春”が来たら、綺麗な花を咲かせるんだよ』





春ちゃんの言う通りだと思った。

あたしは春と春ちゃんがいてくれるから笑っていられる。




友達のいなかった中1までの寂しかった時を取り戻すように、2人に出会ってからのあたしは本当に幸せだった。




3人そろって、無事地元の同じ公立高校に合格して、入学式には校門前の桜の木の下で3人で写真を撮った。





楽しい、幸せな高校生活になるはずだった。


……なるはずだったのに。



壊したのはあたし。






────…







「あ、もうこんな時間……今日は晴におにぎりでも買っていってあげようかな?」





ジワッと浮かんだ涙を零さないように、大きな独り言を口にする。





「晴が好きなおにぎりの具はたらこだったよね。明太子も好きかな?」





あたしが泣くのは間違ってる。

泣いていいのは春と春ちゃんだから───




カップのミルクティをあおるように飲み干した。





2人を深く傷つけてしまった…。




あたしが春のこと好きになってしまったから。

その気持ちを持て余して、隠しきれなかったから。



春と春ちゃんに依存しすぎたから。


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