【完】ヒミツの恋を君と。
「おっさん。いえ、店長、サテンではなくカフェです。そして決して天才ではありません」


「なんだよリツキは本当に俺のこと好きだよな。…って、モカ聞いてた?…オイオイ一点見つめたまま固まってどうした?」





どうしたも、こうしたも……あなたのせいです。

あんなことしといて『どうした』って聞いちゃえる店長が分からない。




これだからイケメンは苦手なんだよっ!




店長は、なお固まったままのあたしを見て「どこ見てんのかと思ったらオムライス?チーズソースも食べてみたい?」なんてとんちんかんな言葉を掛けてくる。




っ!?




あたしの体がビクッと反応したのは、頬に何かが触れた感覚があったから。





「はい、モカ口開けて、あーん!」





ハッと我に返ると、店長の左手があたしの頬に添えられてて、右手のスプーンに盛られたオムライスが口元に迫ってた。


胸の貞操を奪われた上、初間接キスまで奪われるっ!




こ、怖いっ!




更に固まってしまったあたしの目の前に、スッと誰かの腕が横切った。




その瞬間、頬に添えられてた手の感覚は消えて、口元にあったスプーンが上に上っていく。





「え?」




びっくりして目線を上げると、目の前には晴の背中。

店長とあたしの間に割って入る様にいた。


晴は店長の手を掴んでて、そのスプーンに載ったオムライスをぱくっと食べてしまった。




もしかして、晴。

……あたしのこと助けてくれたの?





その顔を見上げても、無表情で何を考えてるのか分からないけど。

守ってくれるかのようなその姿に、胸のところがじわじわ温かくなっていく。


店長はもぐもぐ口を動かしてる晴を見上げて、おかしくてたまらないというようにクッと笑いを漏らした。



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