【完】ヒミツの恋を君と。
長い前髪も、黒縁眼鏡も、その表情を隠してるけど、明らかに違う。


あたしとは違う。




晴は、あたしとあんなに顔を近づけても動揺ひとつしてないよね?


胸の奥が少し曇るのを感じてた。





「じゃぁ、俺こっちから行くから」


「あ、うん…」





3年の教室は南校舎の2階。

2年の教室は南校舎の3階。

屋上は北校舎。




だから、北と南の校舎を結ぶ渡り廊下を渡って南校舎に入るまでは一緒に行けるはずなのに、晴はいつも屋上から出てすぐ、あたしと離れて違う道から3年の教室に向かう。




わざわざ遠回りまでしてなんでその道を通るんだろう?



振り向いて晴の背中をバレないように見送った。



バイト以外にも晴には人に言えない秘密がある。

この時のあたしはそんなことを何となく感じ取っていた。


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