サラリーマン太郎の勇者日記
牢屋は冷たいよ
 うおっ!? ここはどこなんだ!!
 目覚めたらとつぜん、ヘンな場所に布団ごと移動していたのだっ。
 家内はどこだ!? 子供は!? 寝たきりじいさんのおむつは!?
 わ、わたしが変えなければ誰が変えるのだ!?
 目覚ましがならなかったじゃないか、課長にどやされる・・・・・・ひいいい。
 

 私が髪の毛をわしわしとかき乱していると、重そうな鉄の鎧を身に着けたあやしげなオッサンが登場。
 私の肩をたたいた。
「もうし、このようなのっ原で何をやっとるか」
 私は枕元においていた眼鏡をはめ、その男を観察してみる。
「アンタ誰?」
 尋ねると、彼はむっとした表情で答えた。
「きさま、どこの軍隊だ。百姓か。いや,見たことないから・・・・・・わかったぞ。さてはグスタフの手先だな?」
「は? グスタフって誰? 俺は東京の赤坂から来たんだよ」
「トキオ? そんなとこ知らんわ! やはり怪しいな。ちょっとこい」
 嫌がる私を鎧男はずるずると引きずって歩く。
 どこへ行く気だろう。
 しかし尋ね返す余裕などなかった。とにかくもがく、もがく、もがく。
「私はしがない証券マンだ、は、はなせ! はなせというに! 出社しなけりゃ、給料が下がるではないか!」
「ごちゃごちゃとうるせえ。ここでは俺様が法律だ。ちっとは従え」
    
 
 放り込まれたのは立派なお城の地下牢。
 じめじめしてやがるし、トンでもねえところだ・・・・・・。
 床といえば石畳。しかも寒い。
「俺は無実だ、このやろ〜。は、はやく会社に連れて行け〜! 首にでもなったら、貴様の責任だぞ」
「ほざくな。そのうち、陛下のおさたが下るだろうからよ」
 陛下とか、妙に聞きなれないフレーズだな。
 しかし警備兵はがちゃがちゃと重そうに金属をこすり合わせながら、牢屋から出て行ってしまった。
 くっそー。どうなっても知らんからな。
 俺が首になったら、あいつの所為にしてやる。
 私は肝をすえて、床に座り込んだ。
 ・・・・・・ちべたい。
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