サラリーマン太郎の勇者日記
私は文学書を主にあつかう会社で営業をしていた。
それだけに、あの時代・・・・・・ヘルギくんやテオドリクス王のいた時代のことが引っかかっていて、知りたくて、書庫の鍵を借り、読み漁ってみた。
ニーベルンゲン叙事詩・・・・・・。
発祥地はドイツか。
それよりもっと古いものは、北欧のサガ、エッダとあった。
さらに、シャルル・マーニュ、錬金術、哲学でも思想でも、関連があると思われるものはほとんど、ひととおりは読み終えることができた。
それにしても、なぜ私は現代に戻ってきたのだろうか。
確かクロノが魔法で心臓を貫こうとした瞬間だけ、記憶に残っていたが。
いったい、どういうことなのだろう。
胸騒ぎがした。
これ以上は、足を踏み入れてはならない気がした。
だが、偶然とは恐ろしいものだった。
ふと視線をとめてしまった文章に、思わず青ざめた。
――ファーヴニル。
この単語が何を意味するのか、にわかには理解しがたかったのだが・・・・・・次の刹那、くぐもった声が聞こえた。
――クククク、タロー。よく気づいた。
私は聞き覚えのあるその声の主を思い出した。
「クロノか・・・・・・」
――そうだよ。お前の心臓が、すべてを、オレのすべてをかなえてくれる。お前の心臓は、ファーヴニルの心臓だからね。
それでか、と私は瞬時に悟れた。
「たった今読んだ。ファーヴニルは魔法の力をシグルズに与えたのだよな」
――そうだよ。同じ名前を持つあの騎士は、その子孫だった。お前が殺したのと一緒だよ。あははは。
たしかに・・・・・・隊長を見殺しに、したが・・・・・・。
いまだに悔やまれる。
だが、そんなことに思い煩っていては、明日はこない。
「クロノ。お前の目的は大体わかった。だが、私をこちらに戻せば、お前の希望は達成されるのか」
――思い違(たが)えるな。お前をこちらに戻したのはこのクロノではなく、お前の兄だ。
お兄ちゃんが?
もしかして、俺を助けるためとか、いう気じゃ・・・・・・。
私は決心した。
「クロノ。もう一度、みんなのところに行く。お前の野望も、達成できるし、一石二鳥だろう」
――ほう。勇気があるな。
クロノはあきれたといった口調だったが、書庫に飾ってある大きな鏡に、やつは姿を現し、入り口を開いた。
――鏡が入り口だ、入れ。
私は必要なだけの知識はつんだ。
だから敵の懐に、飛び込むんだ。
ラリ子と別れたくはないが、しかたがなかった。
これは、俺やヘルギ君たちだけの問題ではなくなってきている、下手をすると世界がなくなってしまうかもしれないのだよ。
「必ず戻るから」
誰に言うでもなく、私はつぶやいて、鏡の入り口を歩いた。
※タローは前の会社をクビになった 笑
それだけに、あの時代・・・・・・ヘルギくんやテオドリクス王のいた時代のことが引っかかっていて、知りたくて、書庫の鍵を借り、読み漁ってみた。
ニーベルンゲン叙事詩・・・・・・。
発祥地はドイツか。
それよりもっと古いものは、北欧のサガ、エッダとあった。
さらに、シャルル・マーニュ、錬金術、哲学でも思想でも、関連があると思われるものはほとんど、ひととおりは読み終えることができた。
それにしても、なぜ私は現代に戻ってきたのだろうか。
確かクロノが魔法で心臓を貫こうとした瞬間だけ、記憶に残っていたが。
いったい、どういうことなのだろう。
胸騒ぎがした。
これ以上は、足を踏み入れてはならない気がした。
だが、偶然とは恐ろしいものだった。
ふと視線をとめてしまった文章に、思わず青ざめた。
――ファーヴニル。
この単語が何を意味するのか、にわかには理解しがたかったのだが・・・・・・次の刹那、くぐもった声が聞こえた。
――クククク、タロー。よく気づいた。
私は聞き覚えのあるその声の主を思い出した。
「クロノか・・・・・・」
――そうだよ。お前の心臓が、すべてを、オレのすべてをかなえてくれる。お前の心臓は、ファーヴニルの心臓だからね。
それでか、と私は瞬時に悟れた。
「たった今読んだ。ファーヴニルは魔法の力をシグルズに与えたのだよな」
――そうだよ。同じ名前を持つあの騎士は、その子孫だった。お前が殺したのと一緒だよ。あははは。
たしかに・・・・・・隊長を見殺しに、したが・・・・・・。
いまだに悔やまれる。
だが、そんなことに思い煩っていては、明日はこない。
「クロノ。お前の目的は大体わかった。だが、私をこちらに戻せば、お前の希望は達成されるのか」
――思い違(たが)えるな。お前をこちらに戻したのはこのクロノではなく、お前の兄だ。
お兄ちゃんが?
もしかして、俺を助けるためとか、いう気じゃ・・・・・・。
私は決心した。
「クロノ。もう一度、みんなのところに行く。お前の野望も、達成できるし、一石二鳥だろう」
――ほう。勇気があるな。
クロノはあきれたといった口調だったが、書庫に飾ってある大きな鏡に、やつは姿を現し、入り口を開いた。
――鏡が入り口だ、入れ。
私は必要なだけの知識はつんだ。
だから敵の懐に、飛び込むんだ。
ラリ子と別れたくはないが、しかたがなかった。
これは、俺やヘルギ君たちだけの問題ではなくなってきている、下手をすると世界がなくなってしまうかもしれないのだよ。
「必ず戻るから」
誰に言うでもなく、私はつぶやいて、鏡の入り口を歩いた。
※タローは前の会社をクビになった 笑