サラリーマン太郎の勇者日記
 私はユースケにもらった剣を腰に差し、上機嫌で鼻歌を歌いながら、敵の城に向かった。
 途中、私を脅す少年と出くわした。
「おいっ、その剣はオレのだ、返しやがれ!」
 少年は短剣を突き出し、私に襲い掛かってきた。
「わわわっ、ちょっとたんま! ちょっとたんま! 話せばわかる」
「問答無用。そこへなおれ、ぬすっとがぁ」
 剣を握ると、自然と滑らかな動きをとるようになり、私は少年を次第に追い詰めていった。
「なんだと、おめえ、グラムを使えるのか」
「どうやら、らしいね」
 彼はため息をついて、剣を奪うことを諦めたといった。
「俺以外にグラムを使いこなすやつがいたとは。正直びっくりだ。俺はヘルギ」
 ヘルギくんは男の私から見ても美丈夫で、強そうだった。
 その彼が剣を奪われた? いったい誰に。
「俺くらいの歳の、怪しげなヤローだった。もうひとり、チビガキを連れていたな」
 なんか、聞いたことあるんですけど・・・・・・。
 まさかユースケか?
「あんたにも使えるってことは、なにか理由があるんだろうな。しかたねえ、それは預かってくれ」
「いいのかい。悪いから返すよ」
「いいって、いいって。それよっか、あんた。ここには何の用で?」
 私は思い出し、羊皮紙を見せた。
 ヘルギくんは顔色を変え、私に投げつけてよこす。
「あっ、いきなりなにを」
「帰れ。俺はここの王子だぞ。テオドリクスめ、なめたまねしやがって。こちらからもラヴェンナにオドワケル隊を使わすと、いってやれ!」
 オドワケルに・・・・・・ラヴェンナ?
 ああ、わからん・・・・・・。

 
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