ワンだふる·ワールド 2 ~逞しきワンコ~ 《TABOO》
大いに堪能して近くのバーへと移る頃には、酔いも回って二人ともハイテンション。
が、バーに入るなり口とお腹を押さえて、フラフラとトイレへ直行するグロッキーなハチ。
酔った上に慣れない辛料理でどうやら腹を下したらしい。
仕方なく私はカウンターで待つことに…。
ふとカウンターの端から見渡すと、アウトローなワンコ達がグラスを傾けている。
渋く寡黙に飲むハスキー
大声で騒ぎたてる悪童ドーベルマンと土佐犬。
無防備でもなかったろうが、気づけばドーベルマンと土佐犬に脇を固められていた。
「ねぇ、一人?俺らと遊ばねぇ?」
柄が悪い。
目つきも態度も悪い。
しかも、完全に戦闘態勢だ。
「え!?あの…彼氏と一緒なので…」
丁重に断ったが、相手は闘犬。
一度噛みついたら、離そうとはしない。
「どこ?彼氏どこ?…サッサと行こうよ。」
「や、今トイレに行ってて…」
「いいから黙って付いてこいよ。」
と問答無用に手首を掴むドーベルマン。
――ハチ!?…まだ?…マジピンチなんだけど…
恐怖に顔を背けた瞬間、掴んでいた手から力が抜ける。
あれ?と顔を上げると、ドーベルマンの手首を捻り上げるナイスガイ、ハスキー。
彼の睨みに闘犬2匹は捨て台詞を吐きながら、シッポを巻いて逃げていく。
「もう、大丈夫だ」
盾となってくれた頼もしい背中は、震える私の心を一瞬で温かく包みこんだ。
――ごめん、ハチ
――帰巣本能があるんだから、一人でも帰れるでしょ?
END