ナツメ
央介さんの、大切な書斎。
この部屋は、我が家の中でも、いつも彼の中心にありました。
この部屋自体が、彼の化身であると言っても、過言ではないくらいに。
一日のほとんどを、彼はここで費やしていたのです。
あなたが訪れてくれた週末と、わたしとお喋りをしながら食事を摂る以外には。
お茶をいれてこの部屋へ運ぶと、背中を丸めて本を読んでいた央介さんが、ありがとうと言って微笑んでくれたのを、思い出します。
そう、あの、彼のお気に入りだった、籐の座椅子に座って。
ねえ、けれど。
ナツメ。
久しぶりに見た、この央介さんの宝の山は、ぎゅうぎゅうに積み上げられていて、今にも崩れてしまいそうでした。
今まで気がつかなかったけれど、この部屋も、とっても絶妙なバランスで保たれていたのね。
一つ、何か手を加えて引き抜いてしまえば、一気に、跡形もなく崩れてしまうのではないかと思うくらいに。
そういうことって、ナツメ。
本当は。
気がつかないだけで、けっこう沢山、あるのかもしれません。
とにかく、この書斎は。
彼がいつ帰って来てもいいように、綺麗にしておかなくちゃいけませんね。