ナツメ
3月24日
3月24日、日曜日
ナツメ。
週末は、いつもより濃く、重い空気が流れているような気がします。
賑やかだった頃の、このアパートの記憶。
央介さんの居る、風景。
彼の醸し出していた、体温。
それを含んだ、空気。
央介さんの、耳に心地いい少し掠れた声。
無造作に伸びた髪の、乾いた匂い。
シャツから微かに立ち上がる、太陽の熱。
そうしてあなたの……
あなたの笑い声や、甘い香水の匂い。
あなたの好きだった、カフェオレの柔らかい苦み。
わたしを見据える、大きな瞳。
いつも綺麗に整えられた、あなたの姿態。
それらが次々とわたしの脳裏に現れて、優しく、けれども確かに侵食していきます。
この部屋で、たった一人で息をしていると、わたしの身体は、記憶に支配されてしまうようです。