ナツメ
3月26日、火曜日
ナツメ。
桜が満開のようです。
今年はやっぱり、早いわね。
前ページに記したのは、数年前に央介さんが書き残した「桜」という詩です。
書斎を掃除していた時に、本棚の隙間で見付けたノートからの、抜粋です。
(勝手にここに書き写したこと、内緒にして下さいね)
堅苦しくて、どこか、強ばっていて。
央介さんらしい詩よね。
わたしは、央介さんの文章のそういうところが好きでした。
融通のきかない感じが、あの人をよく表しているような気がします。
こうして、彼の記した文字を見ていると、何だか心が落ち着きます。
まるで紙に残された黒鉛の溝に、彼の分身が沈んで、わたしを見てくれているようで。
角張った、神経質な文字の上から、あの、彼の、優しい視線に似たものを感じることができます。