ナツメ
ねえ、ナツメ、けれど。
わたし達は何をそんなに、語り合うことがあったのかしら。
今となっては、ナツメ。
わたし達があの時、面白おかしく話題にしていたことのほとんどを、思い出すことができません。
ああ、そうね、ナツメ。
それはきっと。
当時のわたし達が、あまりにも幸せすぎたからなのでしょう。
今では想像もできないくらいに。
あの時。
わたし達はまだ若くて、運命をも信じていて。
互いに結び合った約束の、心地よさも疑わずに居て。
探り合うための労力を、ただ、微笑みのための糧として。
わたしはナツメに。
ナツメはわたしに。
いつでも、今以上を求めなかった。
同時に、もちろん、それ以下のことも。
けれど、ナツメ。
わたしは女で。
あなたもまた、同じ女で。
知らず知らずのうちに、お互いを邪推し合っていた。
そのことが、結局。
わたし達を駄目にしたのよね。
今なら、わたし。
それが何となく分かるような、気がしています。