ナツメ
4月6日
4月6日、土曜日
ナツメ。
さっき、お兄さんから電話がありました。
普段、わたしは電話にでることはあまりありません。
央介さんの居ない今では、尚更です。
けれど、今日に限ってわたしは、ちょうど電話の側を通りかかっていて。
何気なく、その受話器を取ってしまったのです。
「戸川さんのお宅ですか」と、
緊張した細い声が、
最初、誰のものなのか、わたしにはわかりませんでした。
「湯川です」と、
その後に続いた落ち着いた声は、昨日、病院のベンチの上で聞いたものに、間違いありませんでした。
春樹さんは、昨日、慌ただしく帰ってしまったことのお詫びを言った後に、わたしを食事に誘って下さいました。
やつれた姿のわたしを、心配してくれたのかもしれません。
優しい人ですね。