ナツメ
湿度を含んだ、少し肌寒い空気。
その中を、切るように降りてくる雨粒。
たん、たん、たん。
寂しくて寂しくて。
けれどもすがる温もりは何処にもない。
子供の頃、わたしもよく、1人で雨音を聞きました。
膝を抱えて見上げた窓の外に、もくもくと広がる黒い雲が、本当に、憎らしかった。
雨は、いつも……
父を、わたしの手の届かないところへ、連れて行ってしまったから。
なんて、ナツメ。
ずいぶん、昔のことを思い出してしまいました。
音楽が、悪戯に。
過去を連れてきてしまったみたいね。