ナツメ
……なんて、ナツメ。
そんなことを言ったのなら、あなたは、
「それじゃあ、れん、まるで、恋をしているみたいじゃないの」
と言って、笑うかしら。
そうね。
恋をしていると言うのなら、ナツメ。
それは、春樹さんに漂うあなたの面影にです。
話し方。
食事の仕方。
視線の使い方。
呼吸のタイミング。
指先から醸し出す空気まで、あなた達はよく似ていました。
それを目の前にして、わたしは何度、ドキリとしたことか。
春樹さんから、思わず目を逸らしてしまうことも、あったほどです。
可笑しいわね。
こんなにもあなたに会いたいのに。
春樹さんの背後に隠れる、亡霊のようなあなたには、会いたくない。
それでも、春樹さんの隣に心地よさを求めるわたしは、やっぱり、あなたなしでは、この世界を生きにくいのかもしれない。