ナツメ





そうして雪菜さんは、いつも、わたしのために、アニメのビデオテープを用意していてくれました。


父と雪菜さんは大事なお話があるからと言って、ケーキを食べるとすぐに、二階へあがってしまったので、わたしは一人ぼっちで、それを見ていました。


猫とネズミが追いかけっこをするもの。
黄色い、大きなくまさんが、ハチミツを探しに森へ行くお話。
頭のいいお猿さんが、知らない町へ冒険に行くもの。
自分と同じくらいの女の子が、穴に落ちて、不思議な世界に入り込んでしまうお話。


わたしはそれらを見せてもらうのが楽しみで、父に連れられて雪菜さんの所へ行くのが、大好きでした。



思えば、わたしが物語を書くきっかけをくれたのも、雪菜さんだったのかもしれません。


雪菜さんの本棚は、絵本から専門書まで、沢山の本で埋め尽くされていたのですから。













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