ナツメ

4月26日






4月26日、金曜日




ナツメ、昨日は。
随分余計なことを書き綴ってしまったように思います。

その、告白のページを、何度か破り捨ててしまいたい衝動に駆られました。



けれども、ナツメ。

雪菜さんとの思い出は。
わたしの中の、核に近い部分を埋めています。

父の、不貞のこともまた。



今のわたしを形成している、その、ほとんどのものが。
父と母ではなく、父と雪菜さんとの間にできたものだと言っても、過言ではないかもしれません。


わたしの、この黒く、真っ直ぐな髪と。
血色の悪い唇。
なだらかな肩のライン。
それら以外に。
母の面影を鏡で見ることは、ほとんど、ないのですから。





ナツメ。


わたしは。
どうしたって、ここから立ち去ることはできないのでしょう。


この独白を破り捨て、素知らぬふりをしていたところで。
わたしという人間が、しぶとくもここで。

のうのうと息をしていることに、変わりはないのですから。
























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