ナツメ
ナツメ。
頬を撫でる一陣の風のように、わたしの心を吹き抜ける寂しさの中にも。
微かな希望のようなものが、確かに、暖かく芽生え始めているような気がします。
ポケットの中に収めた、わたしと央介さんの誓いの象形。
まるでそれが、幼い子供が弾くピアノのように。
不器用だけれども真っ直ぐな、想いを届けてくれるようです。
ナツメ。
わたし達は、まだ。
捉え始めた光に僅かな希望を託して。
この世界で。
息をしているのです。