ナツメ
ナツメ。
もうずっとずっと、昔のことなのに。
今でも、静かに目を閉じれば、微かに聞こえてくるような気がします。
あの日の、期待に膨らんでいたみんなの、無邪気な笑い声が。
そうして、ナツメ。
その明るさに馴染めず、一人、ぼんやりとしていたわたしに、声をかけてくれたナツメ。
あなたの……
眩しい笑顔と、快活な声。
ナツメ。
今だから言えるけど、わたし。
あの時は、足が震えていたの。
まだ、人間が少し、怖かったから。
でも、変わりたかった。
そして、勇気を絞り出すようにして、ここへ来たの。
だから、あなたがわたしを見付けてくれた時は、本当に嬉しかった。
涙が出るほどに。
嬉しかったのよ。