月宮天子―がっくうてんし―
『ああ、そうですか。じゃあ、異常なしなんですね。よかった。はい。伝えます。はい。どうもありがとうございました』
カチャ。
愛子が受話器を下ろし振り返ると、そこに海が心配そうに立っている。
「一君、検査したけど、どっこも異常ないってよ。よかったね」
「そうか。よかった。うん、ホントによかった」
海が、またもや事件現場にいた、となれば事情聴取されるに決まっている。幸い、一もすぐに意識を取り戻し、愛子と口裏を合わせてくれたのだ。
その結果――。
愛子と香奈が斉藤に襲われ、ふたりとも気を失って何が起こったかわからない。海と一は一緒にいて何も見なかった。ということにしたのだった。
だが、一も犬に変化したのには違いない。自分のことは棚上げで、海は一のことを酷く心配した。
結局、色々理由をつけて検査してもらったのである。
そして、どこにも異常はみつからなかったと連絡があったのだった。
「ねえ、カイ。わたしはもう大丈夫だから。割と吹っ切れて来たし……カイも検査したほうがよくない?」
海は愛子に気遣って、なんでもない、と言っているのだ。そのことに愛子も気付いていた。
でも、先日の対パンダ戦で、愛子の中で何かが変わった。
カチャ。
愛子が受話器を下ろし振り返ると、そこに海が心配そうに立っている。
「一君、検査したけど、どっこも異常ないってよ。よかったね」
「そうか。よかった。うん、ホントによかった」
海が、またもや事件現場にいた、となれば事情聴取されるに決まっている。幸い、一もすぐに意識を取り戻し、愛子と口裏を合わせてくれたのだ。
その結果――。
愛子と香奈が斉藤に襲われ、ふたりとも気を失って何が起こったかわからない。海と一は一緒にいて何も見なかった。ということにしたのだった。
だが、一も犬に変化したのには違いない。自分のことは棚上げで、海は一のことを酷く心配した。
結局、色々理由をつけて検査してもらったのである。
そして、どこにも異常はみつからなかったと連絡があったのだった。
「ねえ、カイ。わたしはもう大丈夫だから。割と吹っ切れて来たし……カイも検査したほうがよくない?」
海は愛子に気遣って、なんでもない、と言っているのだ。そのことに愛子も気付いていた。
でも、先日の対パンダ戦で、愛子の中で何かが変わった。