月宮天子―がっくうてんし―
海の手にする『光剣』から光が消え、ただの棒に戻る。
『月光玉』の色をした『月宮天子』海は、動かずに氷月の背中を見送っている。
その姿に業を煮やした朔夜は、錫杖を手に氷月のあとを追おうとした。
「待った! ちょっと待った! 奴らを大神島に帰せないかな? それで結界が万全になれば、奴らは出て来られない。麻酔銃とかで眠らせて、島に連れ戻すって方向で……」
「カイ、あなたは『月宮天子』様ではないのですか? どうして奴らを」
「その千年前の『月宮天子』も、奴らを滅ぼさなかった。外界とは隔離して、生き残るように計らったんだ。だから……」
「だから、尚のこと、滅ぼしておけばよかったのだ!」
烈火のごとく怒る朔夜に、横から愛子がポツリと言った。
「カイには無理だよ。だって……血が繋がってるかもしれないのに」
「なっ!」
「カイは言ってた。父親が獣人族かもってことより、妹がいるってわかったことのほうが嬉しいって。カイなら……獣人族でも家族って思っちゃう人だよ」
愛子の言葉は、朔夜の胸を打ったようだった。
『月光玉』の色をした『月宮天子』海は、動かずに氷月の背中を見送っている。
その姿に業を煮やした朔夜は、錫杖を手に氷月のあとを追おうとした。
「待った! ちょっと待った! 奴らを大神島に帰せないかな? それで結界が万全になれば、奴らは出て来られない。麻酔銃とかで眠らせて、島に連れ戻すって方向で……」
「カイ、あなたは『月宮天子』様ではないのですか? どうして奴らを」
「その千年前の『月宮天子』も、奴らを滅ぼさなかった。外界とは隔離して、生き残るように計らったんだ。だから……」
「だから、尚のこと、滅ぼしておけばよかったのだ!」
烈火のごとく怒る朔夜に、横から愛子がポツリと言った。
「カイには無理だよ。だって……血が繋がってるかもしれないのに」
「なっ!」
「カイは言ってた。父親が獣人族かもってことより、妹がいるってわかったことのほうが嬉しいって。カイなら……獣人族でも家族って思っちゃう人だよ」
愛子の言葉は、朔夜の胸を打ったようだった。