月宮天子―がっくうてんし―
こういう事態に備えて、先週、避難訓練をしたばかりである。
「愛ちゃん、早く! 体育館に行って保護してもらうんだ!」
「カイは? あんたはどうするのよっ!」
「俺は……」
意識が愛子に傾いたそのとき、海の抵抗する力が弱まった。その一瞬の隙を突いて、大蛇は海の左肩に噛み付く。
「ウッ……グゥ」
「きゃあっ!」
頭の大きさはほとんど人間と変わらない。口の大きさは軽く五倍はあるだろう。大蛇の牙は海の肩に食い込み、鮮血が溢れ出した。ギシギシと牙が骨を噛み砕こうとする。
愛子は咄嗟に、各教室に置かれている『不審者撃退用スプレー』を思い出す。保健室の壁にも消火器よろしく設置してあった。
ソレを手に取ると、大蛇の目に噴射した。
スプレーの直撃を食らい、大蛇は口を開けて暴れ始める。
「カイ、しっかり!」
大蛇の牙が外れた瞬間、愛子は海の腕を掴み、引き摺るようにして廊下に飛び出した。
「そうは行かないよ。お嬢ちゃん」
廊下の真ん中に立ち塞がるのは、さっきの化け物女!
「愛ちゃん、早く! 体育館に行って保護してもらうんだ!」
「カイは? あんたはどうするのよっ!」
「俺は……」
意識が愛子に傾いたそのとき、海の抵抗する力が弱まった。その一瞬の隙を突いて、大蛇は海の左肩に噛み付く。
「ウッ……グゥ」
「きゃあっ!」
頭の大きさはほとんど人間と変わらない。口の大きさは軽く五倍はあるだろう。大蛇の牙は海の肩に食い込み、鮮血が溢れ出した。ギシギシと牙が骨を噛み砕こうとする。
愛子は咄嗟に、各教室に置かれている『不審者撃退用スプレー』を思い出す。保健室の壁にも消火器よろしく設置してあった。
ソレを手に取ると、大蛇の目に噴射した。
スプレーの直撃を食らい、大蛇は口を開けて暴れ始める。
「カイ、しっかり!」
大蛇の牙が外れた瞬間、愛子は海の腕を掴み、引き摺るようにして廊下に飛び出した。
「そうは行かないよ。お嬢ちゃん」
廊下の真ん中に立ち塞がるのは、さっきの化け物女!