月宮天子―がっくうてんし―
しかし、そこを白露が鉤爪を振り翳し、海に襲い掛かったのだ。右、左、交互に迫り来る鉤爪攻撃を巧みにかわす。

隙を突いて、今度は海が蹴りを入れた。

膝を曲げて溜めを作り、海は白露の胸辺りに横蹴りを放つ。


白露は廊下の端まで転がりつつ、胸を押さえ呻いている。かなり効いたみたいだ。

だが、起き上がると、不意に飛ぶように階段を駆け上がった。


「カイ! あの化け物……白露を捕まえなきゃ! 市村先生を元に戻せない」

「わかった!」


愛子のひと言に、海は白露のあとを追う。愛子も追いかけて階段を駆け上がった。

校舎は四階建てだ。愛子が二階辺りに来たとき、上からもの凄い衝撃音が轟いた。何かが破壊された音だ。

最上階まで辿り着いたとき、音の正体がわかった。

屋上へのドアが、なんと外に向かって拉(ひしゃ)げていた。もちろん、内開きのドアである。


愛子が屋上についたとき、緑のヒーローカイと白露はすでに戦闘中だった。

白露は天空から、時速一二〇キロを超える速さで、獲物目がけて急降下する。


「愛ちゃん来るなっ!」


海は愛子に叫びながら白露の攻撃を避けている。愛子も校舎の中に慌てて戻った。

白露は多分あれが本来の姿なのだろう。

巨大鷲となり、自在に校舎の上空を滑空している。


「キェーッ! 死ねぇーー」


< 67 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop