月宮天子―がっくうてんし―
「もうっ! バカバカバカ! なんで敵に情けを掛けるのよ。相手は人間に変身する化け物なのよっ」

「ご、ごめん。でも、人の形を見てるから、とても殺せないよ。俺……クゥッ!」

「カイッ!」


突然、身を屈めて苦しみ始める。

変身が解けるのだ。海の緑色の体が、肌色になり……二メートルを超す身長が、三十センチ近く縮まった。

海は、はぁはぁ、と荒い息を繰り返し、本当に苦しそうだ。


「カイ、しっかりして。誰か呼んで来るから」

「い、や。だいじょう、ぶ。もう、平気だ」


愛子の手を取り立ち上がろうとした瞬間、よろけてふたりは屋上に転がった。


「あ、ごっ、ごめん」



そのときだった。


「な、なんだコレは! なぜドアが――なっ! 何をしてるんだ、お前たち!」


(確か、一年の学年主任で、何先生だったっけ?)


愛子は咄嗟に事態が把握できず、呑気なことを考えた。

しかし、


「この非常事態に、こんな場所で全裸の男と、何をやってるんだぁーーーっ!」


白露が戻って来て、この学年主任を連れ去って欲しい。

真剣に願う愛子であった。



~第3章につづく~


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