月宮天子―がっくうてんし―
ガタンゴトン、ガタンゴトン……。

電車の中でもふたりはずっと黙ったままだ。


笠川駅から乗って数分なのに、窓の外には広大な明治記念公園を囲む緑が、一枚の絵のように流れる。


しかし、そんな長閑な景色すらロクに目に入らず……口火を切ったのは海だった。


「ゴメン、愛ちゃん。君と喧嘩なんてしたくないよ。仲直りしよう」


愛子はそんな海の言葉に、思わず言ってしまったのだ。


「デート、してくれたら……許してあげる」


その瞬間、ガタンッ! と電車が揺れ、愛子は海に抱きついた。


何度か抱きついたことはあるのに、なんだかメチャクチャ恥ずかしい。


そのとき、頭の上から海の声が降ってきた。


「う……うん、いいよ」


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