月宮天子―がっくうてんし―
まだ駅前辺りは賑やかで、夜九時とはいえ開いている店も多い。

だが、家の近くの小学校付近まで来ると……学校というのはなぜこんなに不気味なのだろう？　しかも、夜の学校はやたらシーンと空気が張り詰めている。

そのせいか、聞きたくない音まで聞こえてしまう。

例えばそう……後方を歩く人間の足音とか。

愛子は小学校の塀に沿って歩き、何気なく足を止めた。後方で響く足音もピタッと止まる。愛子が再び歩き始めると、また足音も聞こえ始め……。


（これってなんかのホラー？　それとも二時間サスペンス？　でもこの場合、追われている女子高生って殺される役じゃなかったっけ？）


そんなことを考え始めると、もう止まらない。


コツコツ……


不意に、愛子の脳裏に朝のニュースが流れ始めた。

事件のあった明治公園は徒歩でも行ける距離だ。いや、都内全域で事件は起きている。学校では猟奇殺人の愛好家たち……犯人は大勢いてゲームのように殺しているんじゃないか？　と、誰かが言っていた。

ネットでは、行方不明者も急増していて、その人たちも殺されている可能性が高い、なんてことも書いてあった。

詳しくは報道されてないが、噂では、見つかった死体は相当酷い状態らしい。

まるで獣が食い散らかしたかのような……。


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