月宮天子―がっくうてんし―
一は海を見るなり、吐き捨てるように言う。
「なんで、人前でフルチンになってる変態野郎に、謝らないとなんねぇんだよ。コイツが悪いんだよ。ばーか」
「一君。お願いだからやめて。もう……お願いだから」
「香奈先生……。一! お前いい加減にしないかっ!」
この園の職員なのだろう。香奈に気があるのか、彼女の涙を見た瞬間、一に対する怒りを剥き出しにした。
男性職員は大きな手を一気に振り上げ――。
少年は先日と同じく歯を食いしばる。だが、今度は海も考えたのか、男性職員の腕を止めたのだった。
「気持ちはわかります。でも、手は上げないでください」
海は男性職員を見据えてキッパリと言い切った。
しかし、若僧に止められたのが不愉快だったと見える。加えて、香奈の前で恥を掻かされたと思ったのかもしれない。
「コイツがご迷惑をお掛けしたことは聞いてます。お詫び申し上げます。でも――あんたには関係のないことだ。口を挟まないでくれ」
「『怒ること』と『叱ること』は違います」
ボルテージの上がる男性職員に比べ、海は冷静だった。
海にこんな面があったのか、と愛子は唖然とする。しかし、それが気に食わなかったらしい、男性職員の口調は豹変した。
「何を偉そうに、青二才が! コイツは二、三発殴ったところでこたえやしないんだよっ!」
「なんで、人前でフルチンになってる変態野郎に、謝らないとなんねぇんだよ。コイツが悪いんだよ。ばーか」
「一君。お願いだからやめて。もう……お願いだから」
「香奈先生……。一! お前いい加減にしないかっ!」
この園の職員なのだろう。香奈に気があるのか、彼女の涙を見た瞬間、一に対する怒りを剥き出しにした。
男性職員は大きな手を一気に振り上げ――。
少年は先日と同じく歯を食いしばる。だが、今度は海も考えたのか、男性職員の腕を止めたのだった。
「気持ちはわかります。でも、手は上げないでください」
海は男性職員を見据えてキッパリと言い切った。
しかし、若僧に止められたのが不愉快だったと見える。加えて、香奈の前で恥を掻かされたと思ったのかもしれない。
「コイツがご迷惑をお掛けしたことは聞いてます。お詫び申し上げます。でも――あんたには関係のないことだ。口を挟まないでくれ」
「『怒ること』と『叱ること』は違います」
ボルテージの上がる男性職員に比べ、海は冷静だった。
海にこんな面があったのか、と愛子は唖然とする。しかし、それが気に食わなかったらしい、男性職員の口調は豹変した。
「何を偉そうに、青二才が! コイツは二、三発殴ったところでこたえやしないんだよっ!」