月宮天子―がっくうてんし―
中国政府に聞かれたら抗議を受けそうなセリフを言いつつ、愛子はシャベルを振り下ろした。

しかし、愛子のシャベルなど凶暴なパンダにはまるで効かない。振り払われただけで腕が痺れ、愛子はシャベルを放してしまった。


「きゃっ!」


グウォー! 咆哮を上げ、パンダ斉藤は愛子に突進してきた。


「ハァッ!」


そのとき、愛子の横を一陣の風が吹き抜ける。

一瞬のことでよくわからない。


「カイッ!?」


そう叫んだ愛子だったが、


「あ、あなた……この間の」


パンダの攻撃を素手で受けていたのは――光崎蓮であった。



蓮はパンダ斉藤を睨みつけると腰のベルトから、スッと『光剣』を抜き出した。深く呼吸し、臍下丹田に気を入れる。


「ハアァァッ! ――出でよ、光剣!」


見る見るうちに『光剣』は光を集め、直線状に輝きを放つ。


「『黄玉(おうぎょく)』か……」


短く言うと、蓮は舌打ちしてパンダに斬り掛かる。


< 96 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop