部長とあたしの10日間
「嫌い…?
誰が誰をだ」


部長は元々気難しい顔をさらに険しくさせてこっちを見る。
何よ、今さらしらばっくれないでよ。


「…さっき、あたしが飲み会に来るのは反対だって言ったじゃないですか。
それって来られたら迷惑なくらい、あたしが嫌いってことでしょ」


あたしの言葉に部長は目を見開くと、


「まさか!
あれは和田が…」


心外だと言いたげに顔をしかめたかと思うと、突然口をつぐむ。


「和田さん…?」


何で今、和田さんの名前が出てくるの?
ていうか、何で言いかけてやめるの?
すごく気になるんですけど。


不満なあたしを見て部長は気まずそうに顔を背けると、しぶしぶ続ける。


「…だって、お前さっき和田と葛城が一緒にいるところを見てショック受けてただろ」


さっきあたしが二人を見てたこと、知ってたんだ。
ていうか。
あれはただ、あんなあからさまに主任が好きだってオーラを出してる和田さんにこれまで気付かなかった自分に呆れてただけで…。


「もしかして…。
部長が和田さんと葛城主任のことを気にかけてたのって、あたしのことがあったから…?」


さっき部長が煙草を吸いに行った理由。
あのときはてっきり、葛城主任と和田さんが気になるから二人を避けたんだと思ってた。


「ーーーだからさっき飲み会に来るなって言ったんですか?」


「何を今さら」


部長は大げさに溜め息をつく。


何だ。
そうだったんだ。
二人を気にしてるように見えたのは、葛城主任が好きだからじゃなかった。
部長は、和田さんに失恋したばかりのあたしを気にして、あんな風に言ったんだ。
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