部長とあたしの10日間
「あたしだって分からないけど、好きになっちゃったんです!
部長が葛城主任と冷やかされてるのを見るだけで嫉妬しちゃうくらい」


「───あんなの、うちの奴らが勝手に面白がってるだけだろ」


「本当に葛城主任のことを何とも思ってないんですか?」


あたしの言葉に、部長は思いっきり顔をしかめる。


「何度言わせるんだ。
あいつはただの部下で…」


「飲み会にだって、二人一緒に遅れて来るし。
席も当たり前のように隣に座ったきり、和田さんが間に入るまでずっと引っ付いてたし」


「───同じ仕事をしてたんだ、切り上げる時間が一緒でもおかしくないだろ。
それに、飲み会の席は、…こっちも色々あるんだよ」


色々って何があるのよ。
何で全部教えてくれないの?
だから二人は怪しいって思われるんじゃない。


「───出張の夜に寝不足だったのも、主任と仲良くやってたからじゃないんですか?」


「お前な…」


部長の額にうっすら青筋が見える。


「お前は俺と葛城がデキてた方がいいのか、そうじゃないのか、どっちなんだ。
いい加減にしないと怒るぞ」


ていうか、もう怒ってるじゃない。
さっきまで慌てて可愛いげがあったのに、いつの間にか普段の憎たらしい口調に戻ってる。


「デキてない方がいいです」


あたしが慌てて答えると、部長は大きく息を吐いて、こっちを見た。
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