部長とあたしの10日間
なんか昨日から部長の手の平の上で転がされてる気がするんだけど。
もやもやしたままおにぎりにかじりついていると、部長の視線があたしの指で止まったのに気付いた。


「そうか。
何かが違うと思ったら爪か」


「───よく気付きましたね」


昨日の告白で興奮したのか、なかなか寝付けなくてネイルを始めたら、ついつい気分が乗って地味に凝った仕上がりになったのだけれど。
まさか部長がこんな細かいことに気付くタイプの男だとは、正直思ってもみなかった。


「パソコンのキーボードを打つ指先がかわいいだけで何だかテンション上がるし、仕事も頑張ろうって気が起きるっていうか…」


そこまでまくし立ててから、我に返る。


「部長にはこういうの、無駄とか何とか一蹴されそうですけど…」


一応あたしなりに、色も派手なのは避けたり、ラインストーンもちっちゃいのにしたり。
仕事に影響ないデザインにと気を遣ってはいるんだけど、部長みたいな男にはそれでも印象は良くないのかもしれない。


「確かに必須ではないな…」


やっぱりそう思うんだ。
そりゃ男の人にしてみればそうだよね。


「だけど、不要でもない」


ん?
どういうこと?
あたしが首を傾げていると、部長が後を続けた。
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