部長とあたしの10日間
「───例えば、毎日何かしらの会議があるだろ。
いちいちセッティングして、みんな都合をつけて会議室なりWebなりに集まるけど、ほとんどの場合、会議の前にある程度結論は出てる。
時間を優先するなら、会議なんてせずに決定事項をメールで一斉送信すれば済む」


うわ。
上層部が聞いたら怒りそうな意見。
まぁ、効率重視の部長らしいけど。


「じゃあ何でそんな無駄なことするんですか」


「その無駄が必要だからだ」


何それ。
何か禅問答みたいになってるんですけど。
あたしが首を傾げるのを見て部長は苦笑しながら続けた。


「───同じところに集まって顔を合わせて時間を共有することで連帯感や信頼関係が生まれて、それが業務を円滑に進める。
無駄なことも、時には必要なんだよ」


あ、そうか…。


何となくだけど、部長の言いたいことが分かった気がする。


そして、何で部長があんなに企画部の面々から慕われているのかも。


「お前もそれでテンションが上がって仕事がはかどるんだろう?
それならお前にはその無駄が必要ってことだ」


部長はあたしのネイルを指して笑うと。
ごちそうさま、と湯呑みを手に立ち上がった。


「───それなら…」


あたしは給湯室へ向かう部長の後を慌てて追いかけると、その腕を掴んで引き止める。


「あたしとデートするのはどうなんですか?」
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