部長とあたしの10日間
部長の切れ長の目がみるみる見開かれ、あたしを凝視する。


「は…?」


「無駄なことも必要だって言うなら、あたしとデートしてくれたっていいはずですよね」


部長の持論を利用するなんて、我ながらずるい誘い方だって分かってる。
だけどこの理屈っぽい男を手に入れるためには手段は選んでいられないのだ。


「却下。
それは双方にとってメリットがある場合に限る」


すぐさま否定されるのが悔しい。


「でも、あたしにとってのメリットが大きければ総合的にはプラスに…」


何とか理由をつけて約束を取り付けようとしたそのとき、後ろから低い声が響いた。


「───取り込み中のところごめん」


え…?
振り返ると、営業部の後藤さんが立っていて。
少し不満そうな顔であたしたちを見つめていた。
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