部長とあたしの10日間
「さすが。
部長のこと、よく分かってますね」


「ーーー歳もそう離れてないし、叔父というより兄貴みたいなもんだからね」


そっか。
叔父と甥とは言え、10歳くらいしか違わないならそうかもしれない。
懐っこい後藤さんと、それを手懐ける部長の姿を想像するとちょっと笑える。


同時に、あたしがどんなに近づこうと頑張ったって、これっぽっちも心を開いてくれないのに。
後藤さんの距離感がちょっと羨ましい。


「後藤さんには完全に心を許してる感じ。
あんなにリラックスしきった部長を見るの初めてだったから驚いちゃいました」


面白いもの見ちゃった、なんて笑っていると、


「ーーーこっちの方が驚いたよ」


後藤さんはソファーに腰を下ろしながら不機嫌そうに言った。


「え?」


その部長に優るとも劣らない端正な顔を見ながら、恐る恐る隣に腰を下ろすと。


「櫻井さんて、叔父貴のこと好きだったんだ」


後藤さんは少し困ったような複雑な顔で、ゆっくりあたしを見つめ返した。
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