部長とあたしの10日間
「何言われても俺の方がいいって説得するつもりだったのに、まさかそんな風に返されるとは思わなかった。
ますます惜しいな、櫻井さんのこと」


苦笑した後藤さんの顔は、血が繋がってるからか、どこかやっぱり部長に似てる。


まずい。
あたしは今、その顔が一番好きなのよ。


最近非モテ期にどっぷり浸かっていたせいか、
ご無沙汰だった甘い言葉に惑わされてしまう。


「今のところ劣勢のようだけど。
現時点で叔父貴は櫻井さんの気持ちに応えてないみたいだから、俺にも可能性はあるよね」


さすがデキる男。
ピンポイントで痛いところを突いてくる。


確かに、あたしのことを少しでも気にかけてくれていたら、あのままデートをうやむやにするはずがない。
こうしてあたしを後藤さんに付いて行かせたのは、そういうことだ。


「返事は今じゃなくていい。
なんなら叔父貴に振られたときの保険にしてくれたっていい」


後藤さんが茶目っ気たっぷりに言う。
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