部長とあたしの10日間
テーブルの上に置かれたタバコの銘柄は以前飲み会で見かけたものと同じだし、灰皿の中の吸い殻には口紅の跡もない。


ペアの食器だったり、女子が男の部屋に置いていきがちな化粧品やアクセサリーも、見渡す限りない。


アポなしで家に立ち寄ってこれなら、葛城主任の他にも女の影はなさそうとみて間違いないかな。


それにしても、シンプルを通り越して、まるでモデルルームみたいな部屋。
色もモノトーンで統一してるから生活感が全く感じられない。


後藤さん曰く社畜の部長のことだから、どうせここへは寝に帰ってるだけのようなものなのだろうけど。
こんな高そうなマンションに住んでるくせにもったいない。


ソファーに横たわる部長の側でその穏やかな寝顔を見ていると、急に猛烈な睡魔が襲ってくる。


さっきの店のお酒はどれも美味しくて。
部長と一緒で少しテンションが上がっていたこともあって、後藤さんに勧められるまま、かなり飲んじゃったし。
部長を抱えるのに体力を消費したのか、あたしも実は結構酔っていたりする。


ああ、部長の高級そうなコートとスーツに皺がつく前に脱かせた方がいいんだけど…。
そう思っているうちに、あたしの瞼はゆっくりと塞がっていった。
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