部長とあたしの10日間
後藤さんは確か葛城主任と同期入社の男性で。
その整った顔立ちと巧みな話術で成績トップの座を独占し続けている、営業部のエースだ。


「おいしいワインのある店見つけたんだけど、良かったら今日とか一緒にどうかな」


後藤さんに開口一番誘われて、少しホッとする。
よかった。どうやら非モテ期ではないらしい。


男性からの誘いに簡単に乗ってはいけないと頭で分かっていても、女子の理想を現実にしたような甘いマスクに誘われれば全く心が揺れないわけはない。


けれど、あたしの現在のターゲットはあくまで和田さん。
小泉部長に一泡吹かせるためにも、他の男に時間を割いてる暇はない。


「すみません、今日は先約があって」


あたしは適当に嘘をついてこの場をやり過ごす。


「残念。
またそのうち誘わせて」


後藤さんはあたしの頭にポンと手を置くと、領収証の束を渡して去って行った。
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