部長とあたしの10日間
給湯室の棚から湯呑みを取り出すと、ポットのお湯を一度その中に注ぐ。
熱いままより少し冷ましてから入れたお茶の方がおいしいから、あたしはいつもこうしてる。


誰からも反応がないところを見ると、実際はそんなに違わないのかもしれないけれど、あたしの密かな自己満足。


急須に茶葉を気持ち多めに入れたあと、湯呑みに入れたお湯をゆっくり移す。


業務用の安いお茶は時間を置きすぎると渋味が出るから、30秒ほど経ったら湯呑みに注ぎ入れた。


「失礼します」


ドアをノックしてミーティングルームに入ると、中では和田さんがプレゼンをしているところだった。


普段の穏やかな顔もいいけど、真剣な顔もいいな。
なんて、見とれていると。


「用が済んだら、早く出て」


どこからともなく嫌味な声が聞こえてきた。
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