部長とあたしの10日間
声のした方を見ると、性根と同じくらい真っ黒なスーツに身を包んでこっちを睨む小泉部長の姿があった。


そうだ。
企画部にはもれなくコイツが付いてくるんだった。


顔を合わせたくなかったのに、今日は朝からツイてない。
和田さんと話せて上昇しかけた気分が、途端にジェットコースターのように急降下していく。


あたしは小泉部長からプイッと顔を背けると、テーブルの上に茶托に載せたお茶を並べる。


こっちだって、あんたがいる場所に長居したくないですよーだ。


「失礼しました」


言葉とは裏腹に、心の中で小泉部長にあかんべーをしながらあたしはミーティングルームを後にする。


何あいつ!
何あいつ!!
何あいつ!!!


自分のデスクに戻ってからもイライラが止まらない。


言葉を交わせば交わすほど腹が立つ男なんて初めてだ。
今まではよその部の単なる上司だと思ってたけど、今日を境に敵よ、敵。
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