部長とあたしの10日間
「…ご馳走様でした。
すごくおいしかったです」


おしゃれなイタリアンレストランの外で、あたしは会計を終えて出て来た和田さんに頭を下げた。


急遽決めたにも関わらず、値段も女ウケも良さそうな店に連れてくるあたりが、やっぱり和田さんは抜け目ない。


「どういたしまして。
だけど、河合さん来れなくて残念だったね」


かと思えば。
二人で食事を楽しんだばかりだというのに、和田さんは悪びれもせずに沙織の名前を出す。


一体どういうつもりなの?
沙織には用事があると言って断ってもらったけど、まさかそれを額面通りに受け取ってないよね。


「今日は急だったし、機会があったら今度は三人で…」


「沙織にはあたしが来ないでって頼んだんです」


堪えきれず、あたしは和田さんの言葉を遮った。


「和田さんと二人きりになりたかったから」
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