部長とあたしの10日間
和田さんは黙ったままあたしを見る。
その気まずそうな顔に、あたしは確信する。


「あたしの気持ちに気付いてますよね?」


あたしが聞くと、和田さんはごまかしきれないと観念したように頷いた。


「知ってて、ああいう態度を取ってたんだ…」


和田さんの形のいい眉が下がる。
あたしは何でこんなひどい言い方しかできないんだろう。


「ごめん。
俺、実は…」


「葛城主任と付き合ってることなら知ってます」


あたしの言葉に和田さんが目を見開いた。
いつもポーカーフェイスの和田さんが動揺するのを見たのは初めてだ。


「知ってるならどうして…」


「納得いかないんです」


和田さんは眉を潜める。


「試しもせずに振られるなんて嫌なんです。
一度でいいから、試してみてから答えを聞かせてくれませんか」
< 33 / 146 >

この作品をシェア

pagetop